事例で理解するSTP

顧客に選ばれるために必要なマーケティング知識としてSTPがある。STPとは、セグメンテーション( segmentation)、ターゲティング(targeting)、ポジショニング( positioning)の頭文字の組み合わせの略である。セグメンテーションとは、年齢や地域、ライフスタイルなどニーズが違う基準で市場を分けることである。それらニーズの違うセグメントの中で、どこを狙うのか決めることをターゲティングといい、そのターゲット中で他社との違いを明確にすることをポジショングという。
 
これらSTPは、マーケティング戦略を立案する上で、重要な視点である。今回は、このSTPについて、事例をもとに見てみよう。
 
お家騒動で注目を集めた大塚家具。その大塚家具の大塚久美子社長が、ダイアモンドオンライン2015年9月3日号の中でインタビュー記事をもとにSTPの考え方を説明したい。
 
<セグメンテーション( segmentation) について>
大塚社長は、業績悪化の理由の一つが、これまで高価格帯や中価格帯に強みを持っていたが、中価格帯の顧客が低価格帯に流れたことがその要因と分析している。ここでいう高価格帯とは、50万円以上~数百万円で、中価格帯は10万円以上~50万円未満、低価格帯は10万円未満のこととしている。
 
なぜ、大塚社長は、このように価格帯もとに業績悪化の原因を説明しているのか?それは、価格帯によってお客様のニーズが違うと認識しているからである。だから、高価格、中価格、低価格という価格帯で市場を分けているのである。
 
セグメンテーション
 
<ターゲティング(targeting)について>
そして、大塚社長が発表した中期計画の中で、今後は低価格に流れてしまった顧客を中価格帯に呼び戻すと記載している。これは、中価格帯をターゲットにしてマーケティング施策を打つという意思表示なのである。
 
では、なぜ中価格帯なのか?低価格帯でも良いのではないか?
 
ここでターゲットを決める上で重要な視点がある。それは、「市場に魅力があるか?」「自社の強みによって、競合に勝てるか?」という視点である。
 
低価格帯は、市場としての魅力があるが、イケヤやニトリなど自社よりも経営資源に勝る競合がいるので勝ちにくいと判断したと推測される。また、今まで培った高価格帯や中価格帯市場での強みも低価格帯では活きにくいのも理由だろう。
 
一方の中価格帯の市場は、どうだろう。大塚社長のインタビューの中で、中価格帯を主力とした会社でイケヤやニトリのような強者はいないと述べている。つまり、この中価格帯の市場の中では、大塚家具は、経営資源の豊富な会社として、スケールメリットが発揮できるので勝ちやすいと判断しているのである。
 
ここでのターゲットは、中価格帯の市場である。
 
ターゲティング
 
<ポジショニング( positioning) について>
では、そのターゲットとした中価格帯の市場の中で、他の企業との違いをどのように訴求するか?
大塚社長 のインタビューによるとこれらの市場で「 品数の豊富さ」や「品質も安心」という違いを訴求することで、自社のポジションを明確にしていくとコメントしている。
 
中価格帯という市場の競合は、ソファもダイニングテーブルも、衣類収納もマットレスもとフルラインで揃えている競合企業が少ないので、その空白となるポジションを狙っているのである。この中価格帯の市場の中で、自社のポジショニングを明確にすることを意識しているのである。
 
ポジショニング
 
今回の記事は、ダイアモンドオンラインのホームページから大塚家具・大塚久美子社長直撃インタビュー 語られなかった「久美子改革の全貌」を参考にしました。
詳しくは、以下のサイトをご参照ください。→ http://diamond.jp/articles/-/77823
 
皆様も自社の事業のSTPを考えてみましょう。