孫子の兵法に学ぶマーケティング戦略

中国最古の兵書に「孫子の兵法」がある。
今から約2500年前、中国春秋時代の孫武によってかかれた書物といわれている。
 
孫子の兵法は、13編で構成される短編の書物であるが、マーケティング戦略を立案する上で
気づきの多い本である。
 
孫子の兵法 計編 第一に「五事」という言葉がある。
 
岩波文庫から出ている「新訂 孫子 金谷 治 訳注」によると
五事とは、「道」「天」「地」「将」「法」のことである。
 
道とは、人民たちを上の人と同心にならせる政治のあり方のこと
天とは、陰陽や気温や時節などの自然界のめぐりのこと
地とは、距離や険しさや広さや高低などの土地の状況のこと
将とは、才智や誠信や仁慈や勇敢や威厳といった将軍の人材のこと
法とは、軍編成の法規や官職の治め方や主軍の用度などの軍制のこと
 
これを私なりに簡単に説明すると以下のようになる。
 
道とは、理念を指し、天とは、タイミングを指している。
そして、地とは、戦場の状態、将とは、現場の指揮官のことである。
最後の法とは、軍隊構成の法規などの仕組みを指している。
 
孫子は、戦う前に敵国と自国の5つの点について比較し、実情を把握する
ことが重要だと述べているのである。つまり、これら5点を理解し、実践するものは
勝ち、理解せず、実践しないものは、負けると言っているのである。
 
孫子は、戦争に関する書物である。しかし、企業経営における戦いにもこれら
5つの視点が大切なことは明白である。
 
以下、私の解釈でマーケティング戦略に落とし込んで説明したい。
 
マーケティング戦略は、上位概念である理念に基づき策定されるものであるし、
いかに良い商品を開発しても、タイミングを逸すれば、成功するわけがない。
また、市場の状態、つまりターゲット市場の状況を精査しないと、市場が変化すると
生き残れない。差別化されたポジショニングは、永遠ではないのである。
 
そして、指揮官が戦略と戦術の一貫性を保ちつつ、マーケティング施策を
実行するように現場を動かしていかないと「戦略をつくっても実行されない」という
絵に描いた餅に終わるのである。
 
勿論これらマーケティング戦略を実行するためには、評価制度や顧客情報を収集する仕組みなども欠かせない。
 
約2500年もの前に書かれた同書が今なお読み継がれるのは、経営の本質を突いているからである。戦いの原理原則は、いつの時代も変わらないのである。
 
ソフトバンク創業者の孫正義氏は、孫子の兵法を熟読し、自分になりの解釈で「孫の二乗の法則」を
編み出し、経営を行っていると聞く。
 
わずか13編、200ページ弱の書物であるが、その奥深さは底知れない。
孫子の兵法を読み込み、自分なりの解釈を深め、マーケティング戦略に活かしていただきたい。