顧客は何を買うか?

我々コンサルタントは、支援先でたびたび次のような質問をする。「なぜ顧客は、御社から製品を買うのですか?」

このような質問をすると勿論、「うちのこの製品が良いから買っているのです」と答えられることが多い。

本当にそうだろうか?

他社で販売していないような独自製品であれば、それが、顧客が御社から買う理由の一つになるだろう。しかし、多くの場合は他社でも同様のものを扱っているものだ。はたして顧客は、何を買っているのだろうか?。

ここで、通販文具の業界でトップシェアを持つアスクルが、顧客にどのような価値を提供しているか?考えてみたい。

アスクルは、ご存じのとおり、WEBやカタログで文具などを注文すると翌日に配達してもらえる企業向けのサービスを行っている。 アスクルが登場する1993年当時は、どうだったかというと、文具がほしい場合は、会社の事務員などが文具店に足を運んで購入するのが常識だった。

もっとも、大企業など従業員数の多い会社は、文具を大量に購入するので文具店が会社まで配達してくれる。しかし、従業員数の少ない会社は、少量しか購入しないため、配達サービスはなく、文具店に足を運ぶ必要があり、購入する手間がかかることが不満になっていた。 

この従業員数の少ない会社が抱える不満を解消したのがアスクルのサービスなのである。

では、最初の質問に戻る。「なぜ顧客は、御社から製品を買うのですか?」

それは、「事務員が本来業務に集中し、生産性がアップする」からアスクルで買っているのである。この事例から、文具という製品のみを買っているのではないことがわかる。

つまり、製品・サービスの提供の先にある「顧客にとっての価値」を買っているのである。

「なぜ顧客は、御社から製品を買うのですか?」この質問への答えを深堀することが、マーケティングを考える上で重要なのである。

あなたの会社の顧客は、どのような価値を買っているか?一度じっくりと考えていただきたい。