ストーリーとしての競争戦略

2010年に出版された「ストーリーとしての競争戦略 楠木 建 著」 という本がある。

本格的な経営書としては、異例のベストセラーとなった。今回は、同書からマーケティング戦略に参考になる項目を紹介したい。

同書には、「始まりはコンセプト」という章がある。※詳しくは、第4章P237を参照。

ここでいうコンセプトとは、「誰に何を売っているのか」を指している。この問いかけは、マーケティング戦略を考える上で重要である。

なぜなら、「全員がお客様です」といっていたのでは、ターゲットを絞って、その方が求めるものを提供する競合に勝ちにくいからだ。

そして、もう一つの重要な問いかけが「何を売っているのか」である。企業側は、「商品・サービスを売っている」というかもしれない。しかし、お客様は、何を「買っている=ほしい」のだろうか?

お客様は、商品やサービスをほしいのか?そうではないハズである。商品・サービスを通じて、なんらかの課題を解決したいハズである。その課題解決こそがお客様がほしいものである。たとえば、化粧品を買う女性は、化粧品がほしいのではなく、美しさがほしいのである。

つまり、お客様は、決して商品やサービスを買っているのではないのである。であるならば、企業側も商品・サービスを売っていると浅く考えるのではなく、「自社は、どのような課題解決を売っているか?」と考える必要があるのだ。

同書には、このあたりの考え方を事例を交えて詳述している。同書の事例でいえば、通信教育事業を展開するベネッセは、「学習を促進するコミュニケーション」を売り、中古書籍を販売するブックオフは、「リソース生活のインフラ」を売っている。さらに、グルメ情報誌であるホットペッパーは、「生活情報の提供による消費のマッチング」を売っているのである。

つまり、商品・サービスの先にある「お客様にとっての課題解決」を売っているのである。このコンセプトという考え方こそ、マーケティング戦略の重要な問いなのである。

ストーリーとして競争戦略には、これらコンセプトの考え方以外にも企業の競争優位の作り方やそれを支える強みについて記載している。是非、ご一読することをおすすめしたい。